脂肪肝について【超音波検査技師向け】

腹部エコー

脂肪肝の超音波診断:基本所見と注意点

脂肪肝は健診や日常診療で頻繁に遭遇する所見トップ3の一角であり、超音波検査技師にとって重要な評価対象の一つです。単なる脂肪の蓄積にとどまらず、肝硬変や肝細胞癌(HCC)、さらには心血管疾患のリスク因子です。早期発見・適切な評価が求められています。本記事では、脂肪肝に対する超音波検査の基本から実践的な観察ポイントを整理し、日常検査にすぐ活かせる内容として解説します。

脂肪肝とは|定義

脂肪肝とは、肝細胞に中性脂肪が過剰に蓄積した状態であり、肝細胞の5%以上に脂肪沈着がある場合に脂肪肝とされます。

つまり、確定診断をする為には肝生検が必要になります。
ただし、経皮的に肝臓を穿刺するため侵襲性が高く、それによって得られる情報も脂肪肝かどうか。これだけなので脂肪肝の為だけに肝生検をすることは滅多にないと思います。

脂肪肝の主な原因は以下の通りです:

  • アルコール性脂肪肝
  • 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)※1
  • 肥満・糖尿病・脂質異常症
  • 薬剤性

特にNAFLDは、単純性脂肪肝から非アルコール性脂肪肝炎(NASH)※2へ進展し、最終的には肝硬変や肝細胞癌へ至る可能性があるため、画像評価の精度が重要になります。

※1 近年は病名が整理され、代謝の異常を背景とする脂肪肝は「MASLD:マッスルディー(代謝機能関連脂肪性肝疾患)」

※2 近年は病名が整理され、炎症が強いタイプは「MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)」

超音波所見

脂肪肝の基本的な超音波所見は以下の通りです。

  1. 肝輝度の上昇
  2. 肝腎コントラスト
  3. 肝内血管の不明瞭化
  4. 深部エコー減衰

肝腎コントラストについて注意点!

慢性腎臓病(CKD)などで腎皮質の輝度が上昇している場合、偽陰性(コントラストがつかない)になりやすいため、腎機能の把握も重要です。その場合は肝脾コントラストを参考にしましょう。

肝内血管の不明瞭化のポイント

肝静脈の壁が見えにくくなる段階は、中等度以上の脂肪肝を示唆します。

深部エコー減衰のポイント

横隔膜の描出が困難になるレベルは、重症(Severe)と判断する大きな指標となります。

脂肪肝の重症度(グレード)判定基準

レポートには「脂肪肝あり」だけでなく、以下の客観的グレードを記載しましょう。

グレード診断基準の目安
軽度 (Mild)肝・腎コントラストは軽度。血管の不明瞭化や深部減衰はほとんどない。
中等度 (Moderate)肝・腎コントラストが強く、肝内血管の走行が追いにくくなる。深部減衰が目立ち始める。
高度 (Severe)浅部の輝度は非常に高いが、深部や横隔膜がほとんど描出が不良。

ただし主観評価であるため、施設内での基準統一が不可欠です。

不均一脂肪沈着パターン

脂肪肝は必ずしもびまん性とは限らず、以下のようなパターンを取ります。

  • 地図型:不定形な高エコー域が散在
  • 区域型:門脈・肝静脈を境に分布差
  • 限局的脂肪沈着:局所的な高エコー域
  • 限局的低脂肪域:脂肪沈着の少ない低エコー域

限局的低脂肪域

特定の部位だけ脂肪がつかない現象。腫瘍(低エコー腫瘤)との誤認に注意。

  • 好発部位:S4(胆嚢付近)、S1、S2
  • 特徴:内部を正常な血管が貫通している。
       限局的低脂肪域による血管の圧排がない。

限局的脂肪沈着

特定の部分だけ脂肪が強く沈着するパターン。

  • 形態:地図状、区域型(門脈・肝静脈を境にする)、限局型。
  • 特徴:内部の血管走行に異常がないこと。周囲血管の圧排がないことを確認します。

レポート作成時のポイント

検査技師のレポートは、医師が診断を下すための重要なエビデンスです。

報告書には以下を明確に記載します:

  • 脂肪肝の有無と程度
  • 評価根拠(肝腎コントラスト、減衰など)
  • 観察制限の有無

👉 例文
「肝腎コントラスト陽性、深部減衰や血管の不明瞭化は認めず、軽度脂肪肝の所見です。S4に30mm大の地図状低エコー域を認めますが、内部を門脈が貫通しており限局的低脂肪域と考えます。」

エコーくん
エコーくん

文章で書くのもいいですが、パッと見でわかる様なレポートを書くことを強くおすすめします。
と言うのも、みなさんは1日にたくさんの検査をこなしているかと思います。そんな中で全てのレポートを全て文章化していくのはかなり効率が悪いと思います。そこで、一部をテンプレート化してキーボードをたたく回数を減らしましょう。

ちなみに私はこんな感じのレポートにしています。

肝臓:軽度脂肪肝(+)
    肝腎コントラスト(+)
    深部エコー減衰(-)、肝内血管不明瞭化(-)
   S4に径30mm大の低エコー域(+)、血管の貫通像(+)
    →限局的低脂肪域疑い

脂肪肝は書いておいて重症度は手打ち。
カッコ内は空欄にしておいてレポート作成時に+-を入れる。
区域やサイズの数字は空欄にしておいてレポート作成時に入力する。

エコーくん
エコーくん

仕事が遅いと感じている人はこの様な簡単な所から効率アップを目指しましょう!
施設内で統一することも大切です。

まとめ

脂肪肝は頻度が高いからこそ、単なる「高エコー」として流すのではなく、以下を意識することが重要です。

  1. 超音波所見の4つを意識し、客観的なグレード判定を行う。
  2. 脂肪の不均一化を腫瘍と見間違えない。
  3. レポートの見やすさと、効率の良い作成方法

超音波検査は、技師の腕一つで見える世界が変わります。
日々の検査でこれらを積み重ねることで、診断価値の高い超音波検査が実現できます。
脂肪肝の評価精度向上は、患者の将来の疾患予防にも直結する重要な役割です。
検査技師として、その意義を再認識しながら技術を磨いていきましょう。

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