原因・考えられる病気・検査・治療をわかりやすく解説
「胸がムカムカする」
「吐きそうで気持ち悪い」
「胃のあたりが重い」

日常生活の中で、このような症状に悩まされる事はありませんか?このような 吐き気(悪心:おしん) は、多くの方が一度は経験する身近な症状です。しかし、単なる食べ過ぎによる一時的なものから、早急な受診が必要となる病気まで、原因は実にさまざまです。
本記事では、吐き気の原因・考えられる病気・検査・治療方法 をわかりやすく紹介します。症状が続く場合や気になる症状がある場合は、我慢せず早めの受診をおすすめします。
余談ですが悪心は「おしん」とも「あくしん」とも読めます。
おしん…吐き気や不快感、あくしん…悪意のある心
意味が異なりますのでしっかり使い分けましょう
吐き気(悪心:おしん)とは?
吐き気とは、胸やみぞおちにムカムカした不快感が生じ、「吐きそう」 と感じる切迫した状態のことを指します。
身体に有害なものを外に出そうとする防御反応(生体防御反応)の一つです。そのため、市販の吐き気止めなどで無理に嘔吐を抑え込んでしまうと、体内に毒素やウイルスが留まり、かえって症状が悪化することもあるため注意が必要です。
吐き気は、大きく以下の2種類に分類されます。
①消化器の刺激で起こる吐き気
食べ過ぎ、アルコール、ウイルス感染などで胃腸が刺激されることで起こります。
②脳(中枢)の刺激で起こる吐き気
脳の嘔吐中枢が刺激されることで起こります。
例:片頭痛、メニエール病、脳腫瘍、くも膜下出血 など
さらに、薬の副作用、つわり、乗り物酔い、ストレスなどでも起こり、原因は多岐にわたります。
吐き気の主な原因
日常生活で起こりやすい原因
- 食べすぎ・飲みすぎ
- 早食い
- アルコールの多量摂取
- ストレスや緊張
- 乗り物酔い
- 食中毒
- 異物の誤飲
- 薬の副作用
- 妊娠初期のつわり
- 睡眠不足・疲労
特に薬の副作用やストレスによる自律神経の乱れは、幅広い年代で見られます。
吐き気・嘔吐を起こす可能性のある病気
吐き気の背後に以下のような疾患が隠れている場合があります。
消化器疾患
- 急性胃炎・慢性胃炎
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
- 胃がん
- 逆流性食道炎
- 腸閉塞(イレウス)
- 感染性胃腸炎(食中毒など)
- 急性膵炎・慢性膵炎
- 急性肝炎
- 胆石症・胆のう炎
- 虫垂炎(盲腸)
- 腹膜炎
吐き気とともに、腹痛、下痢、胸焼け、便秘などの症状がある場合は、消化器の病気が疑われます。
耳・脳・神経の病気
- メニエール病
- 突発性難聴
- 片頭痛
- 自律神経失調症
- 脳腫瘍
- 脳出血
- くも膜下出血
- 緑内障の発作
吐き気は消化器だけでなく、脳や耳の病気 でも起こるため注意が必要です。
頭痛、めまい、麻痺、意識障害などを伴う吐き気は、脳に原因がある可能性があります。これらは命に関わる緊急疾患の場合があるため、すぐに受診が必要です。
吐き気・嘔吐がある場合の流れ(一例)
吐き気・嘔吐の原因の中には、早期診断が必要な疾患 が多く含まれています。そのため医療機関では以下のような検査を行います。
①問診
- いつから症状があるか
- 症状が起こるタイミング
- どのような吐き気か(ムカムカ・激しい嘔吐など)
- 食事の内容
- 既往歴
- 現在服用している薬
②診察(触診)
腹部の痛みや張り、圧痛の位置や有無を確認します。
③必要な検査
- 胃カメラ(上部消化管内視鏡)
→最も有効性が高く、胃炎・潰瘍・がんなどを直接確認できます。
鎮静剤を使った「苦しくない胃カメラ」に対応する医療機関もあります。 - 血液検査
- 超音波検査
- CT検査
- 頭部MRI/眼科受診(胃以外の原因が疑われる場合)
各種検査で消化器科で明らかな異常が見つからない場合は、眼科や脳神経外科などへ適切に紹介されます。
吐き気・嘔吐の治療方法
治療は 「原因に対する治療 」と 「症状を和らげる治療」 の2つを組み合わせて行います。
原因に対する治療
- 逆流性食道炎 :生活指導+胃酸を抑える薬
- 胃炎 :胃酸を抑える薬、粘膜保護剤
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍:胃酸を抑える薬、ピロリ菌除菌
- 感染性胃腸炎:整腸剤、脱水の補正(点滴)
- 胆石・膵炎 :専門科での治療
- 腸閉塞など:場合によっては外科手術が必要
- メニエール病 :耳鼻科的治療
- 頭痛・脳疾患 :専門科での治療
吐き気・嘔吐の症状を抑える治療
- 吐き気止め(制吐剤)
- 点滴による水分補給
- 胃腸の動きを整える薬
ただし、嘔吐には「有害物質を排出する役割」 があるため、原因によっては無理に吐き気を止めると危険な場合もあります。必ず医師の判断のもと治療を行うことが重要です。
このような症状がある場合は早めに受診を
以下の症状は緊急性の高い病気が隠れている可能性があります。
- 突然の激しい頭痛+吐き気
- 強い腹痛
- 何度も繰り返す嘔吐
- 血を吐く
- 意識がもうろうとする
- おなかがパンパンに張る
- 高熱を伴う
少しでも「おかしい」と感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。
まとめ|吐き気が続くときは我慢せず受診を
吐き気や嘔吐は「よくあること」と軽視されがちですが、軽い胃の不調から命に関わる病気までさまざまな原因によって起こります。
特に、「激しい頭痛を伴う」「血を吐いた」「腹痛が激しい」「水分すら摂れない」といった場合は、迷わず医療機関を受診してください。
また、「食欲がない」「胃の調子が悪い」慢性的に続く「なんとなくの吐き気」も、ストレスや自律神経だけでなく、隠れた胃疾患の可能性があります。
「これくらいで病院に行っていいのかな?」と遠慮せずに、早期発見・早期治療が辛い症状から解放される一番の近道です。
長引く場合や強い症状がある場合は、早めに医療機関で検査を受け、適切な治療を行うことが大切です。
