げっぷやおならが多くて困っている方へ

腹部エコー

原因と考えられる病気・受診の目安を解説

エコーくん
エコーくん

「げっぷがよく出る…」「おならの回数が多くて気になる…」
こうしたガス症状は日常的に起こる生理現象ですが、回数が極端に多い生活に支障を感じるほど増えている場合や、いつまでも症状が続いたりする場合には消化器の病気が隠れていることがあります。「ただのガスだ」と自己判断して放置していると、背景に隠れている消化器系の疾患を見逃してしまう可能性があります。

この記事では、げっぷやおならが増える原因、注意すべき病気、医療機関を受診すべきタイミングについて、消化器内科の専門的な視点からわかりやすく解説します。


げっぷ・おならが出る仕組みと「受診の目安」

食事をする際、私たちは食べ物と一緒に無意識に空気を飲み込んでいます。また、腸内では食べ物が消化・分解される過程でガスが発生します。これらが口から排出されるのが「げっぷ」、肛門から排出されるのが「おなら」です。

● げっぷが増える主な理由

食事中に飲み込んだ空気が胃に溜まり、それを口から排出したものです。
特に以下のような生活習慣で増えます。

  • 早食い・よく噛まない
  • 炭酸飲料をよく飲む
  • ストレスで無意識に空気を飲み込む
  • 姿勢が悪く胃が圧迫される

● おならが増える主な理由

おならは、食べ物が腸で分解される際に発生するガスと、飲み込んだ空気が混ざったものです。

以下のような場合に増えやすくなります。

  • 野菜・豆類などガスを発生しやすい食品を多く摂る
  • 腸内環境の乱れ
  • 便秘で便が腸内に長くとどまる
  • 早食いやストレスによる空気の飲み込み

● 注意が必要な「受診の目安」

生理的な範囲であれば問題ありませんが、以下のような症状が続く場合や、他の兆候がある場合には病院・クリニックの消化器内科の受診をおすすめします。

  • 回数が異常に多い状態が長く続いている
  • 胸焼け、胃もたれ、胃痛、吐き気がある
  • お腹の張り(膨満感)が強く、苦しい
  • 便秘や下痢を繰り返している
  • おならが全く出ない(※緊急性が高い可能性があります

また、生活習慣が原因でガスが増えている場合でも、ご自身だけで改善するのは難しいことがあります。専門医のアドバイスを受けることで、生活の質(QOL)を改善することができます。


げっぷが増えるときに疑われる病気

① 食道裂孔ヘルニア

胃の一部が横隔膜を通り胸部側へ入り込んでいる状態です。

この状態自体は珍しいものではなく、症状がなければ経過観察で問題ありません。
加齢や肥満などが影響します。

以下のような症状があります

  • げっぷ
  • 胸やけ

胃液が逆流しやすくなるため逆流性食道炎を併発し、ごく稀ですが重症の場合は手術が必要になるケースもあります。

② 逆流性食道炎(GERD)

胃酸が食道へ逆流し、炎症が起こる状態です。
生活習慣の乱れ、加齢、肥満などが影響します。

以下のような症状があります

  • 胸やけ
  • 酸っぱいげっぷ(呑酸)
  • のどの違和感・咳
  • みぞおちの痛み

放置すると食道の粘膜が変化し、がんのリスクが高まることもあるため、早めの治療が必要です。

③ 機能性ディスペプシア(FD)

「胃が痛い」「胃もたれがする」「すぐに満腹になる」といったつらい症状があるにもかかわらず、胃カメラなどの検査をしても、粘膜に炎症や潰瘍などの異常が見つからない病気です。

以前は「神経性胃炎」や「気のせい」と診断され、適切な治療が受けられないこともありましたが、現在は「機能性ディスペプシア」という正式な疾患として認められています。

胃の機能が低下したり、胃の知覚が過敏になったりすることが原因と考えられており、ストレスも大きく関与します。

以下のような症状があります

  • 胃痛
  • 胃もたれ
  • 膨満感
  • 吐き気
  • げっぷ

現在は効果的な治療薬があり改善が期待できます。
「胃がつらいのに異常がないと言われた…」という方も専門的治療で良くなる可能性があります。

④ 呑気症(どんきしょう)

空気嚥下症とも呼ばれます。
食事の際や、無意識に空気を多く飲み込んでしまうことで、胃や腸にガスが溜まる病気です。
早食いやストレスなどが影響します。

以下のような症状があります

  • げっぷ
  • 膨満感
  • おならの増加

おならが増えるときに疑われる病気

① 機能性便秘

腸の蠕動運動が低下して便が腸に滞留し、腸内細菌による異常発酵が進み、大量のガスが発生します。

以下のような症状があります

  • おならが増える
  • 臭いが強くなる
  • 食欲低下
  • お腹が張る

便秘が続く場合、おならの増加だけでなく生活の質(QOL)低下にもつながるため、医療機関で治療を行うことをおすすめします。

② 過敏性腸症候群(IBS)

検査で腸に腫瘍や炎症などの異常が見つからないにもかかわらず、腹痛や下痢、便秘などの便通異常が数ヶ月以上続く病気です。

ストレスによる自律神経の乱れが腸の働きを乱すことで起きます

以下のような症状があります

  • 下痢と便秘を繰り返す
  • 腹痛
  • 膨満感
  • ガスが溜まりやすい
  • お腹がゴロゴロ鳴る(腹鳴)

生活に支障が出ることも多く、適切な治療で改善が見込めます。
特にガス型と呼ばれるタイプでは、おならが頻繁に出たり、人前でおならが出るのではないかという不安(予期不安)から余計にガスが溜まったりすることがあります。お腹が鳴る(腹鳴)症状に悩まされる方もいます。

③ 呑気症(どんきしょう)

げっぷと同様、飲み込んだ大量の空気が腸まで送られるとおならの増加にも関係します。
食事の仕方やストレス管理が治療のポイントとなります。


おならが出なくなる場合に疑われる病気(要注意)

おならが増えるのも悩みですが、「おならが全く出ない」状態はさらに危険です。

① 腸閉塞(イレウス)

何らかの原因で腸の動きが止まり、内容物が進まなくなる病気です。
過去の手術による癒着や、腫瘍、ヘルニアなどが原因となります。

以下のような症状があります

  • おならがまったく出ない
  • 激しい膨満感
  • 腹痛
  • 嘔吐

放置すると腸が壊死するなど命に関わることもあるため、おならが出ずにお腹が痛い場合は、早急に治療が必要な「緊急性の高い病気」です。

② 大腸がん

大腸がんなどで腸の内腔が狭くなり、腸閉塞のような症状を起こすことがあります。
「最近便が細くなった」「便秘と下痢を繰り返す」といった症状に加えて、「おならが出にくくなっている」場合は要注意です。


必要な検査について

● 問診・触診

どのような時に症状が出るか、食事の内容、ストレスの有無などを詳しく伺います。また、お腹の音や張りの状態を触診で確認し、総合的に判断します。

● 胃カメラ(上部内視鏡検査)

  • 食道・胃・十二指腸の状態を詳細に確認
  • 逆流性食道炎・食道裂孔ヘルニア・胃潰瘍・胃がん・機能性ディスペプシアの除外に有効
  • 必要に応じて組織採取(生検)も可能

● 大腸カメラ(下部内視鏡検査)

  • 大腸全体の粘膜を観察
  • 大腸がん・大腸炎・ポリープの発見
  • 検査中にポリープを切除することも可能(将来の大腸がん予防にもつながります)

● X線検査(腹部レントゲン)

  • 腸閉塞の有無やガスのたまり具合を確認

げっぷ・おならでお悩みの方は消化器内科へ

「げっぷやおならで病院に行くなんて恥ずかしい」

そう思って受診をためらっている方は、実はとても多いのです。しかし、医療機関からすると、ガスに関する症状は日常的に接する非常に重要な「体の声」です。恥ずかしがる必要は全くありません。

げっぷやおならは、誰にでも起こる自然な現象ですが、「いつもより回数が多い」「長く続く」「他の症状を伴う」場合は、消化器の病気が隠れていることがあります。

  • 胸やけを伴う
  • お腹の張りが強い
  • 便秘・下痢が続く
  • おならが出なくなった
  • 胃もたれや胃痛が続く

こうした症状がある場合は早めにご相談ください。

また、病気ではなくても 生活習慣によるげっぷ・おならの増加 はよくあるため、専門医によるアドバイスで改善できるケースも多くあります。

「市販薬を飲んでいるけれど良くならない」

「会議中や電車の中でガスが心配でストレスを感じている」

このような悩みのある方は一度、病院・クリニックに相談してみてください。


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