原因・対処法・検査と治療について分かりやすく解説

「口から血を吐いた…」というのは、誰にとっても非常に驚く出来事です。
実は、口から血液が出る原因にはいくつかの種類があり、その中でも消化管(食道・胃・十二指腸など)からの出血によるものを「吐血(とけつ)」と呼びます。
本記事では、吐血の原因や受診の目安、検査・治療について、わかりやすく解説します。
吐血とは?喀血との違い
吐血とは、消化管から出血した血液を口から吐き出すことを指します。
血液の色は、鮮やかな赤色や黒っぽい赤色をしており、胃液の黄色い液体と混じることもあります。
似たような症状で「喀血(かっけつ)」がありますが、これは肺や気管など呼吸器系からの出血です。
どちらも口から血を出すため見た目は似ていますが、原因も治療法もまったく異なります。
医療機関では、まず「吐血か喀血か」を見分けることがとても大切になります。

吐血の主な原因
吐血は、上部消化管(食道・胃・十二指腸)からの出血が多く、その原因には次のようなものがあります。
- 胃潰瘍
胃の粘膜が傷つき、血管が露出して出血することがあります。 - 十二指腸潰瘍
胃酸が強すぎることで十二指腸に潰瘍ができ、そこから出血します。 - 食道静脈瘤の破裂
肝硬変などで食道の血管が膨らみ、破れて大量に出血することがあります。 - 胃がんや胃血管異形成による出血
胃の中の腫瘍や血管の異常が原因で出血することもあります。 - マロリー・ワイス症候群
嘔吐や激しい咳などで食道の粘膜が裂け、出血する病気です。
このように、吐血はさまざまな疾患のサインであり、中には命に関わるものもあります。
吐血をしたときはどうすればいい?
吐血をした場合、まず重要なのは出血量と全身の状態です。
緊急性が高い場合
- 洗面器に貯まるくらいの血を吐いた
- 意識がもうろうとしている
- 冷や汗・動悸・息苦しさがある
このような場合は、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。
短時間で血圧が下がり、命に関わる危険があるためです。
少量の血でも油断は禁物
「唾に少し血が混じっただけ」「一度だけ少し吐いた」
このような場合でも、時間とともに出血が増えることがあります。
そのため、必ず消化器内科などの医療機関を受診しましょう。
また、受診するまでの間は、
- 食事をとらない
- 安静にして動かない
- できるだけ横にならず、上体を少し起こして休む
といった点を心がけてください。
吐血の検査方法
医療機関では、まず問診で「本当に吐血かどうか」を確認します。
そのうえで、吐血が疑われる場合は以下のような検査を行います。
胃内視鏡検査(胃カメラ)
吐血の原因を特定するために、胃や食道、十二指腸の内部を直接観察します。
出血が続いている場合は、そのまま止血処置を行うことも可能です。
※注意点:
吐血後に食事を摂ってしまうと、検査が遅れることがあります。
吐血をしたら食事をしないようにしてください。食事ができる状態では無いとは思いますが…
血液検査・CT検査
貧血の程度や、肝臓などの臓器の状態(肝硬変の有無)を調べるために行うこともあります。
吐血の治療法
原因に応じて、内視鏡を使った止血治療が行われます。
- 潰瘍からの出血
クリップや電気焼灼で血管を止めます。 - 食道・胃静脈瘤の破裂
輪ゴムで血管を縛る「結紮術」や、ヒストアクリル(接着剤)を注入して止血します。
出血が落ち着いた後は、
- 胃酸を抑える薬(PPIなど)
- 粘膜を保護する薬
- 一定期間の絶食・食事制限
などが行われます。
吐血のあとに気をつけること
治療が終わっても、再出血のリスクがあります。
再発を防ぐためには以下の点が大切です。
- アルコールを控える
- 胃に負担のかかる食事(辛い物・脂っこい物)を避ける
- 薬を自己判断で中止しない
- 定期的に内視鏡検査を受ける
まとめ:吐血を見たら迷わず医療機関へ
吐血は、放っておくと命に関わる可能性のある症状です。
たとえ少量であっても、「一度だけだから」と自己判断せず、消化器内科を受診することが何より大切です。
特に以下のような方は注意が必要です。
- 胃潰瘍や肝硬変の既往がある方
- 日頃から飲酒量が多い方
- 胃の不調を感じている方
早期に適切な検査と治療を受けることで、重症化を防ぐことができます。
もしも吐血があった場合には、ためらわず医療機関へ相談してください。
