今回は「腹痛」について解説します。
腹痛は多くの方が経験する症状ですが、その原因はさまざまです。単なる食べすぎや冷えによるものから、重大な病気のサインである場合もあります。
腹部超音波検査(腹部エコー)は、腹痛の原因を調べる上でとても有効な検査です。本記事では、腹痛の種類・原因・注意すべき症状についてご紹介します。
腹痛とは?
お腹の痛みは、胃やみぞおち周辺の上腹部から、おへそ周辺や下腹部まで幅広い部位に起こります。
痛み方もさまざまで、
- お腹が張るような苦しさ
- チクチク刺すような痛み
- さしこむような鋭い痛み
- 締め付けられるような痛み
などが挙げられます。

痛みの「場所」「持続時間」「強さの変化」によって、疑われる病気は異なります。
受診を検討すべき腹痛
次のような腹痛がある場合には、消化器疾患の可能性があるため、受診をおすすめします。
以下の✅ 項目に当てはまるものはありますか?
ひとつでもチェックが入る場合、消化器内科での受診をおすすめします。
✅ 急に激しい腹痛が起こった
✅ 息苦しさを伴う腹痛
✅ 24時間以上続く腹痛
✅ 徐々に痛みが増してきている
✅ 腸がけいれんするような激しい腹痛
✅ お腹を押すと強く痛む
✅ 食後や空腹時など決まったタイミングで痛む
✅ 吐き気・嘔吐を伴う腹痛がある
✅ 吐血したことがある
✅ 下痢や便秘を繰り返している
✅ 発熱を伴う腹痛がある
✅ 冷汗・めまい・動悸などの貧血症状がある
✅「いつもと違う」腹痛だと感じる
チェック結果の目安
- ✅ 1つでも当てはまる → 消化器内科へ相談を推奨
- ✅ 複数当てはまる → 早めの受診を強く推奨
- ✅ 強い腹痛+吐血 → 救急受診を検討
腹痛の種類と主な病気
腹痛は、発生の仕組みにより大きく3つに分けられます。

🔹 内臓痛
- 鈍い・しめつけられる・重苦しい感じ
- 痛みの範囲がはっきりせず、漠然としている
- 自律神経症状を伴いやすい(吐き気・冷や汗・動悸など)
- 進行すると体性痛(鋭く局在する痛み)に移行する場合もある
【消化器系】
- 胃炎・胃潰瘍:みぞおちの鈍痛や不快感
- 十二指腸潰瘍:空腹時や夜間にみぞおち痛
- 胃がん:進行すると鈍い腹部痛
- 急性胃腸炎:おへそ周囲の痛み+下痢・嘔吐
- 急性虫垂炎(初期):おへそ周囲の鈍い痛み(のちに右下腹部へ移動)
- 胆石症・胆のう炎:右上腹部〜背中への放散痛
- 急性膵炎:みぞおちの強い持続痛、背部へ放散
- 大腸炎:下腹部痛と下痢
【泌尿器系】
- 腎盂腎炎:腰背部〜側腹部の鈍痛+発熱
- 膀胱炎:下腹部の不快感・鈍痛
【婦人科系】
- 子宮筋腫:下腹部の鈍痛・圧迫感
- 卵巣嚢腫の茎捻転(初期):鈍痛から急に激痛へ
- 月経困難症:下腹部の周期的な鈍痛
- 子宮内膜症:月経時の強い下腹部痛
【その他】
- 大動脈瘤(破裂前):背部や腹部の鈍痛
🔹 体性痛
- 腹膜や横隔膜などが刺激を受けて生じる痛み
- 刺すように鋭く、場所がはっきりしている(「ここが痛い」と指がさせる)
- 体動・咳・深呼吸等で痛みが強くなる
- 腹筋防御や反跳痛を伴うことが多い
【消化器系】
- 急性虫垂炎:炎症が進んで腹膜まで及ぶと、右下腹部に強い限局性の体性痛を生じる。
- 消化管穿孔(胃潰瘍穿孔・十二指腸潰瘍穿孔・大腸穿孔など):
消化液や腸内容物が腹腔内に漏れて腹膜炎を起こし、激しい体性痛を生じる。 - 胆嚢炎・胆嚢穿孔:炎症や穿孔で腹膜刺激症状が出現。
- 急性膵炎(重症例):炎症が周囲の腹膜に波及して体性痛に。
【婦人科系】
- 卵巣茎捻転:壊死や腹膜刺激により、急激で強い限局痛を起こす。
- 子宮外妊娠破裂:出血や腹膜刺激で下腹部に鋭い痛み。
外傷・その他
- 腹部外傷(臓器損傷・腹膜損傷)
- 腹膜炎(細菌性、続発性)
🔹 関連痛
- 実際の病変部位とは異なる場所に痛みが出る
- 神経の仕組みによるもので、皮膚や筋肉に痛みを感じることもある
胆道系疾患
- 胆石症・急性胆嚢炎: 右季肋部(みぞおち右側)から右背部(肩甲骨下あたり)に痛み。
膵疾患
- 急性膵炎・膵癌:心窩部(みぞおち)の強い痛みが背部(特に背中中央〜左背部)に痛み。
胃・十二指腸疾患
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍穿孔:心窩部痛が背部や右肩に痛み。
腎・尿路疾患
- 尿管結石・腎盂腎炎:側腹部〜背部痛が鼠径部や外陰部に痛み。
横隔膜刺激
- 横隔膜下膿瘍・肝疾患・脾疾患:肩(特に同側の肩)に痛み(横隔神経由来の関連痛)
大動脈疾患
- 大動脈解離・大動脈瘤破裂: 胸背部に激しい痛み。
上腹部/下腹部痛を伴う代表的な病気
上腹部の痛み
- 急性膵炎
- 胆のう炎・胆石・総胆管結石
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
- 急性・慢性胃炎
- 逆流性食道炎
- アニサキス症(魚介類による寄生虫)
下腹部の痛み
- 泌尿器科疾患(尿管結石など)
- 婦人科疾患(卵巣嚢腫・卵管捻転など)
- 急性虫垂炎(盲腸)
- 腸閉塞(イレウス)
- 大腸憩室炎
- クローン病・潰瘍性大腸炎
- 大腸がん
- 便秘
- 鼠径ヘルニア
腹痛は軽くても注意!
腹痛は日常的な症状ですが、深刻な病気のサインである場合があります。
👉 「いつもと違う」と感じたら、消化器内科の受診を検討してください。
👉 痛みが軽くても、大腸がんや膵炎など重い病気の可能性もあります。
腹部超音波検査(腹部エコー)の役割
腹痛の原因を調べる際、腹部超音波検査や血液検査、CT等がよく行われます。
- 胆石・胆のう炎・膵炎の診断に有効
- 腫瘍や大腸憩室炎の確認にも役立つ
- 放射線を使わず安全に行える
- 「ここが痛い!」「ここが気になる…」とその場で言ってもらえたら、ピンポイントで詳しく観察が可能。

「腹痛があるけど原因がわからない」時、腹部エコーは最初に行う検査としてとても有用です。
「CT検査をするほどでもないと思うけど…」と思われる方は、ぜひ簡単に出来て比較的安い腹部超音波検査を検討してください。
まとめ
- 腹痛は「日常的な大した事ない場合」であっても「重大な病気のサインの場合」でも起こる。
- 「軽いから大丈夫」と自己判断せず、セルフチェックで振り返ることが大切!
- 腹部超音波検査は、腹痛の原因を安全に調べる有効な検査
腹痛を軽く考えず、必要に応じて早めの受診を心がけましょう。