腹部膨満感の原因と対策｜受診の目安を解説
「お腹が張って苦しい」「ガスがたまる感じがする」などの腹部膨満感は、多くの方が一度は経験する症状です。
一時的なものであれば心配ありませんが、長引く膨満感や痛み、食欲不振などを伴う場合は、消化器の病気が隠れていることもあります。
今回は、腹部膨満感の原因となる主な病気や、受診の目安について分かりやすく解説します。
腹部膨満感とは？
腹部膨満感とは、お腹が張って苦しい・重いと感じる状態のことを指します。
食事の際に空気を飲み込んでしまうことや、ガスの排出がうまくいかないことなどで起こることがあります。
しかし、膨満感は単なる「ガスのたまり」だけでなく、腸の動きの低下・炎症・腫瘍などの疾患が関係していることもあります。
次のような症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。
- 激しい腹痛や息苦しさを伴う
- 急に強い膨満感が出た
- むくみ・尿量減少・食欲不振を伴う
- 何日も便やガスが出ない
よくある腹部膨満感の原因となる病気
腹部膨満感の原因はさまざまですが、代表的なものをいくつか紹介します。
① 便秘
腸に便がたまることでガスの排出が妨げられ、お腹が張って苦しい状態になります。
腹痛を伴うことも多く、長期間放置すると大腸疾患や痔の原因になることもあります。
生活習慣の改善や市販薬で治ることもありますが、繰り返す便秘は消化器内科での診察を受けましょう。
② 腸閉塞（ちょうへいそく）
腸の癒着や腫瘍、血流障害などによって腸の内容物が通らなくなる病気です。
腹部膨満感に加えて、嘔吐や激しい腹痛が出ることが特徴で、緊急治療が必要なケースもあります。
「お腹がパンパンに張って痛い」「吐いても治らない」場合は、すぐに医療機関を受診してください。
③ 過敏性腸症候群（IBS）
炎症や潰瘍がないにもかかわらず、腹痛・下痢・便秘・膨満感が続く疾患です。
腸の機能異常やストレスが関係していると考えられています。
「検査で異常がないのにお腹の調子が悪い」という場合は、過敏性腸症候群の可能性があります。
薬物療法や食事・ストレスのコントロールで改善が期待できます。
④ 呑気症（どんきしょう）
食事中に空気を多く飲み込んでしまうことで、胃に空気がたまり膨満感やげっぷが増える状態です。
早食いやストレス、ガムを噛む習慣などが原因になることがあります。
食べ方をゆっくりにする、ストレスを和らげるなどの工夫で改善することが多いですが、症状が続く場合は一度相談しましょう。
⑤ 逆流性食道炎
胃の内容物が食道に逆流し、胸やけや酸っぱいげっぷ（呑酸（どんさん））が起こる病気です。
食後の膨満感を感じやすく、特に高齢者や肥満傾向の方、姿勢が前かがみの方に多くみられます。
食道炎を放置すると、食道がんのリスクが高まることもあるため、早めの治療が大切です。
⑥ 急性胃腸炎
ウイルスや細菌感染、薬の影響などで胃腸の粘膜が炎症を起こす状態です。
吐き気・嘔吐・下痢・発熱・膨満感などを伴い、食欲が低下します。
水分をしっかり摂り、脱水を防ぐことが大切です。重症化する場合もあるため、症状が強いときは医療機関を受診しましょう。
⑦ 機能性ディスペプシア（FD）
胃や腸に明らかな異常がないのに、胃もたれ・膨満感・みぞおちの痛みなどを感じる病気です。
「検査で異常なし」と言われても症状が続く方に多く、ストレスや胃の知覚過敏などが関係しています。
薬物療法と生活習慣の改善によって、今では多くの方が改善しています。
⑧ 腹部の腫瘍（胃がん・大腸がん・膵臓がんなど）
腹部膨満感の中には、がんや腫瘍が原因となっているケースもあります。
特に女性では卵巣腫瘍などでも膨満感が現れることがあります。
体重減少や食欲不振、血便などを伴う場合は、早急に消化器内科での精密検査を受けましょう。
⑨ 上腸間膜動脈症候群（SMA症候群）
急激な体重減少によって、腸を圧迫する血管の周囲にある脂肪が減り、十二指腸が圧迫される病気です。
膨満感や胃もたれ、食後の腹痛が起こり、仰向けで悪化・うつ伏せで軽くなるのが特徴です。
若い女性やダイエット後に多くみられます。
腹部膨満感が続くときは消化器内科へ
腹部膨満感は、一時的なものから重大な病気まで幅広い原因があります。
次のような場合は、早めに消化器内科を受診しましょう。
- 数日以上、ガスや便が出ない
- 痛み・吐き気・嘔吐を伴う
- 体重減少や食欲不振がある
- 膨満感が繰り返し起こる
原因を特定し、適切な治療を行うことで症状を改善し、快適な生活を取り戻すことができます。
まとめ
腹部膨満感は、便秘やガス溜まりなどの軽いものから、腸閉塞・腫瘍などの重大な病気まで、さまざまな原因で起こります。
「様子を見よう」と長い間放置せず、症状が続く・悪化する場合は早めの受診を心がけましょう。
